JFCネットワークは、日本人とフィリピン人の間に生まれた子どもたち(Japanese-Filipino Children:JFC)を支援するNPOです。

特定非営利活動法人 JFCネットワーク

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お知らせ2018.11.02

書籍の紹介『国籍法違憲判決と日本の司法』(信山社、2017年)

ご案内が遅くなりましたが、JFCネットワークをご支援下さっている秋葉丈志さんの著書『国籍法違憲判決と日本の司法』(信山社、2017年)が昨年出版されましたのでご紹介します。

 

秋葉丈志著『国籍法違憲判決と日本の司法』

 

以下は秋葉さんからのご紹介文になります。とてもよい本でしたのでぜひお読みください。

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この本は、JFCネットワークが長年支援してきた国籍確認訴訟で、最高裁判所が歴史的な違憲判決を下すに至った過程や、その意義を研究した本です。

 

2008年の国籍法違憲判決は、親が結婚しているかどうかでJFCが日本国籍を取得できたり、できなかったりするのは不合理な差別であるとして、当時の国籍法3条の規定は憲法に違反するとしました。そして、当時小学生だった原告のJFCたちが日本国籍を有することを認めました。この判決によって国も法改正を迫られ、子どもは親が婚姻関係になくとも、日本人父の認知があれば日本国籍を取得できるようになりました。その結果、既に数千人のJFCが新たに日本国籍を取得するに至っています。

 

この判決はJFCの問題に限らず、日本の「法」のあり方、特に憲法上の権利を保障する司法の役割にとって画期的なものと考えています。憲法にはたくさんの権利が書かれており、それが侵害されたときは裁判所が救済する役目を担っています。ところが日本の裁判所はこの役割に「消極的」であるとされてきました。1947年に現在の憲法が施行されて以降、2008年の国籍法違憲判決はたった8件目の違憲判決でした。こうした中で、国籍法違憲判決は、日本国籍の取得資格という国にとっても重要な領域で、潜在的に数万人の権利救済につながるような、裁判所としてはこれまでになく踏み込んだ判決です。

 

この判決は日本における「マイノリティの権利」にとっても歴史的な意味を持ちます。憲法14条の「法の下の平等」は、政府がすべての人を平等に扱うことを求め、差別を禁じる規定です。しかし、裁判所が日本の法律をマイノリティへの差別に当たるという理由で憲法違反としたのは、国籍法違憲判決が史上初めてでした。この判決を契機に、2013年には民法における婚外子への相続差別が違憲とされ、2015年には民法における女性の再婚禁止期間を一部違憲とする判決が下されました。社会的に「マイノリティ」と位置づけられてきたグループの権利を憲法の求める「法の下の平等」を根拠に裁判所が後押しする流れができたのです。

 

この本は、国籍法違憲判決のこうした側面に焦点を当てて、訴訟を支援したJFCネットワークや弁護士の役割、判決から法改正に至る法務省や国会での議論、法改正後の運用までを踏まえて司法の役割を考察しました。特に、裁判所や裁判官の役割を重点的に分析し、一審の東京地裁で明快な違憲判決を下した菅野裁判官(現在最高裁判事)の存在に着目しました。国籍法違憲判決に至る最高裁内部の思考の変化も詳細に辿っています。

 

また、JFCネットワークの果たした役割を歴史に残すべく、巻末に伊藤事務局長のご協力をいただきJFCネットワークの年表を載せたほか、JFCの生の声も読者に知ってもらいたいと思い、JFCネットワークの20周年を記念して行われたJFCエッセイコンテストの入選作4点の日本語訳を載せました。

 

幸いこの本は高く評価され、今年、日本法社会学会から学会賞をいただきました。これをきっかけに、多くの研究者、法曹関係者、NGO関係者などに、日本の憲法と司法にとって国籍確認訴訟がいかに重要な意義を持つかを知ってもらえればと願っています。

 

秋葉丈志