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2015.03.23
国籍確認訴訟最高裁判決は上告棄却
国籍法12条の違憲性を争った国籍確認訴訟の最高裁判所の判決が、先日3月10日に言い渡されました。判決は、上告棄却という残念な結果でした。
2010年に提訴して5年。長いたたかいでした。判決の内容はまるでこちらの主張を聞いておらず、悔しく憤りさえ感じます。
あきらめきれません。引き続き、この問題解決に向けて取り組んでいきたいと思っています。
弁護団代表の近藤博徳先生のコメントを紹介いたします。
<国籍法12条とは?>
国籍法12条は、日本人の子どもであって出生と同時に日本国籍を取得した者が、外国で生まれ、外国籍も取得している場合には、出生から3ヶ月以内に国籍留保の意思表示をしないと日本国籍を喪失する、という制度です。
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JFC弁護団の弁護士の近藤博徳です。
国籍確認訴訟の最高裁判決についてご報告をします。 長文となりますが、ご容赦下さい。
マリガヤハウスのクライアント達が原告に参加して裁判を戦ってきました、国籍法12条の違憲性を争った国籍確認訴訟の最高裁判所の判決が、先日3月10日に言い渡されました。
判決は、上告棄却という残念な結果でした。 判決文は、裁判所のホームページから検索することができます。関心のある方は、平成27年3月10日、国籍確認訴訟、第三小法廷、などのキーワードで探してみて下さい。 国籍法12条は、日本人の子どもであって出生と同時に日本国籍を取得した者が、外国で生まれ、外国籍も取得している場合には、出生から3ヶ月以内に国籍留保の意思表示をしないと日本国籍を喪失する、という制度です。
裁判の原告となった子どもたち(JFC)の母親(フィリピン人)はもちろん、日本人の父親ですらこのような制度の存在を全く知らず、そのために子どもたちが生まれてから3ヶ月以内に日本大使館に国籍留保届をしなかったために、JFCは日本国籍を喪失しました。
そこで、この国籍法12条は、
① 日本で生まれた子と外国で生まれた子を差別する(日本で生まれた場合は国籍留保をしなくても国籍を喪失しない)、
② 結婚していない両親から生まれ日本人父から認知を受けたこと結婚している両親から生まれた子を差別する(結婚していない両親から生まれ日本人父から認知を受けた場合には外国に住んでいても国籍が取得できる)、
という差別を生んでおり、法の下の平等を保障した憲法14条違反であって無効である、したがってJFCらは生まれたときから日本国籍を有している、と主張して、裁判を起こしたのです。
裁判は、一審、二審とも原告側が敗訴していましたが、最高裁判所に上告をしてから、丸2年が経過していました。上告が認められない事件では比較的早く判決が言い渡されることや、2006年の国籍法違憲判決の時も上告から1年あまりで判決になったことから、今回も逆転勝訴の可能性があるのではないか、と期待していました。
2月下旬に、裁判所から判決言い渡しの連絡があり、敗訴であることが事実上分かった後も、これだけの時間をかけて審理したのだから、相当突っ込んだ判断が示されているのではないか、と考えていました。
しかし、判決文を受け取ってみると、本文はわずか5頁、判断内容が示されている部分は僅か3頁に過ぎませんでした。しかも内容を見ても、一審判決をごくごく簡単に書き直したものであって、ほとんど内容のない判決でした。
判決は、国籍法12条の立法理由とされる、「外国で生まれた子どもの国籍は形骸化する可能性があるから、その発生を抑止する必要がある」、「重国籍を防止する必要がある」の2点について、いずれも合理性があると判断しました。またこのような立法目的を達成するために、日本国内で生まれた子と外国で生まれた子を差別扱いすることも合理性がある、としました。
更に判決は、結婚していない両親から生まれ、日本人父から認知を受けた子との差別について、制度が違うので比較をする意味はない、としました。 けれども、生まれた瞬間にその国籍が形骸化しているかどうかを決めることなど、不可能です。 また、重国籍は他の場面では容認されているのに、外国で生まれた場合(しかも生まれたときに日本国籍をもっている場合)だけ重国籍はだめ、というのは理屈が通りません。
さらに、認知を受けただけの子は国籍が取れるのに、結婚した両親の子は国籍を失う、という結果が非常識であることは誰でも直感的に分かることで、「制度が違う」という理由付けは説明になっていません。
このように、最高裁判所の判断は全く無内容で、結論だけでなくその判断理由についてもとても残念なものです。
原告のJFCやその親たちも、今回の判断にはとても落胆することと思われます。
けれども、最高裁判所の判決が出た以上、この事件はこれで終了となりました。
みなさま、長い間ご支援いただき、ありがとうございました。
今回は非常に残念な結末でしたが、いずれまた別の機会にリベンジを試みたいと思っています。
JFC弁護団 弁護士 近藤博徳