賢さんのケースはマリガヤハウスで2004年に受理したケースでした。賢さんはフィリピンにいたときから独学で日本語の勉強に励み、日本にまだ来たことがない時にすでに日本語検定4級を持っていました。尚子さんが褒めていたのを覚えています。

賢さんは16歳の時に単身で日本に来て、生まれて初めて父に会い、日本の学校に通い卒業し、建設労働などのさまざまな仕事をしながら、料理の学校に通い、シェフとして働けるまでにもなっていました。

「日本のパスポートは世界で通用するので、それを利用しない手はないと思い僕は世界中を回りました」

賢さんはカナダ、アメリカ、その他たくさんの国を回り、アイルランドで現在、生活しています。その理由を尋ねると「ライフバランスがいいから」とのことでした。「僕は日本が大好きだが、日本では働きづめでプライベートの時間がとれないので仕事以外のことをする時間が持てない」と言っていました。

「僕は日本人として日本語ができないことは僕のプライドが許さない」。賢さんは日本を離れても日本語の勉強を続け日本語検定2級を持っています。

今では5つ星の一流レストランの有名なシェフとして活躍しているのを聞き、その料理の写真を見せてもらい、その素晴らしさに感動しました。

趣味の油絵の腕前もプロ級で、近いうちに個展も開きたいと言っていました。この写真はお父さんを描きたいという思いに駆られ描き残したそうです。

いつの時でも努力を惜しまず、前を見て、今に満足せず、どん欲に大きな夢に向かって進んでいる賢さんがとても眩しく誇りに思いました。

一緒にカレーランチを食べ、ニュースレターの作業を終えました。本当にありがとう。会えて嬉しかったです。